一般財団法人日本情報経済社会推進協会

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13.陸上運送業

通商産業省・運輸省告示第二号
情報処理の促進に関する法律(昭和四十五年法律第九十号)第三条の二第一項の規定に基き、国内陸上貨物取引及び輸送・保管の分野において製造業、卸売業、小売業(以下「荷主」という。)及び貨物自動車運送事業者、貨物運送取扱事業者、倉庫業者(以下「陸上運送事業者等」という。)が行う電子計算機の連携利用に関する指針を定めたので、次のとおり告示する。
平成九年六月十六日
通商産業大臣 佐藤 信二
運輸大臣 古賀 誠

国内陸上貨物取引及び輸送・保管の分野において荷主及び陸上運送事業者等が行う電子計算機の連携利用に関する指針

産業構造の変化、輸入貨物の増大など国内輸送の構造的変化が進展するなかで、貨物の小口化が進み国内物流取扱個数は年々増加している。一方、多頻度輸送、冷蔵輸送など高度な物流サービスのニーズが高まるにつれ、全産業界で物流効率化のための業務処理の迅速化への要請が強くなってきている。また、昨今の技術革新により、コンピュータの価格低下、ダウンサイジング等が急速に進展してきたことも追い風となって、これまで、各事業者においてはコンピュータを利用した情報処理を積極的に進め、企業間オンラインシステムを構築すること等により業務の効率化が図られてきた。
しかしながら、個々の事業者ごとに独自のプロトコルによる企業間オンラインシステムの構築が進められると、各システムの互換性の欠如により、複数の端末機の設置、取引先毎のデータ変換処理ソフトの整備等による重複投資、重複入力等の問題が生じるおそれがある。こうした問題を解決するための手段として、EDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)の導入が重要度を増してきている。EDIは、「異なる企業間で、取引に関する情報を広く合意された規約に基づきコンピュータを介して交換すること」であり、「広く合意された規約」(EDI標準)の採用により、同業種間のみならず、異業種間の企業においても効率的な情報交換が行われるというメリットがある。国内陸上貨物取引及び輸送・保管の分野には、荷主業界と物流業界との情報交換が不可欠であり、即ち広く産業界に適用できる汎用性のあるEDI標準の開発と早期普及が望まれるところである。
こうした観点から、平成四年六月に(財)物流技術センターを事務局とする物流EDI研究会が設置され、また平成七年五月には当研究会を物流EDI推進機構に衣替えして、国内物流EDI標準の開発と普及活動が行われてきた。
一方で、平成四年末には(社)日本電子機械工業会で、電子機器業界の物流EDIが具体化され、さらに同年設立された(社)日本ロジスティクスシステム協会が物流EDI標準化の検討を開始し平成六年末までに物流EDIメッセージをまとめた。
これらの団体の物流EDI標準の整合性をとるため、平成七年五月には(財)日本情報処理開発協会産業情報化推進センター(JIPDEC/CII)を事務局とする物流業際EDI調整委員会が設置され、(社)日本電子機械工業会、(社)日本ロジスティクスシステム協会及び物流EDI推進機構が開発してきた物流EDI標準の統一化作業が行われ、平成八年七月にはトラック運送業務についての我が国統一の国内物流EDI標準(以下「JTRN」という。)が完成した。
平成八年十一月には物流業際EDI調整委員会の後を引き継ぎ、産業界の代表者及び学識経験者が広く参加した物流EDI推進委員会が(社)日本ロジスティクスシステム協会と物流EDI推進機構の共同運営で設置され、倉庫業務等を包含した我が国統一のJTRNを開発し、各産業界に普及させていくこととしている。
国内陸上貨物取引及び輸送・保管の分野においては、大手の荷主及び貨物自動車運送事業者を中心にして上記のJTRNの実証実験と実用化に取り組んできたが、物流EDIを適用している企業は一部に限られているのが現状である。今後、物流の効率化を一層進めていくためには、より多くの物流に関係する企業がEDIを積極的に活用していくことが必要であり、そのためにEDIのより一層の普及と電子商取引化に向けての環境整備を図っていく必要がある。今後、こうした課題に対応しつつ、荷主と陸上運送事業者等との間で連携したコンピュータの効率的かつ高度な利用を実現することは、国内陸上貨物取引及び輸送・保管の分野における事業の一層の高度化のための基盤を提供するものであり、我が国経済の発展及び国民生活の向上にも大きく資するものである。
この指針は、以上の認識に基づき、国内陸上貨物取引及び輸送・保管の分野において荷主及び陸上運送事業者等がコンピュータを効率的に利用し、企業経営の一層の効率化を図るため、電子計算機利用高度化計画を勘案し、事業者が連携して行う電子計算機の利用の態様、その実施の方法及びその実施に当たって配慮すべき事項を示すものである。

一 事業者が連携して行う電子計算機の利用の態様

帳票、データ交換フォーマット、そこに記載される項目、コードなどのビジネスプロトコル等を標準化し、これを用いた「企業間オンライン方式」による各事業者間における電子的取引情報交換

二 実施の方法

(一)標準ビジネスプロトコルの積極型利用

以下に掲げるビジネスプロトコルについては、国内の各産業界で普及しつつあるCII標準(JIPDEC/CIIにおいて開発されたCIIシンタックスルール(電子データ交換に用いる構文規則)に基づくEDIに関する標準)を採用するよう努めること。
また、現在、既に電子的にデータ交換を行っている取引データに関するビジネスプロトコルについては、システム更新の機会等をとらえ、順次CII標準への移行を図るよう努めること。

(1)シンタックスルール

EDIで実際に取引データを交換する場合の構文規則

(2)標準メッセージ

取引データの交換に使われるデータ項目を網羅した電子的帳票

(3)データエレメントディレクトリー

取引データの交換に使われるすべてのデータ項目に関して、その名称、属性、内容、桁数等を定めた定義集

(二)EDIを前提とした業務モデルの確立

EDIを導入した企業が、EDIのメリットを十分に享受するためには、従来の帳票の交換を基本とした業務から脱皮し、EDIの導入を前提とした効率的な業務体系を構築する必要がある。このため、EDIによる業務を最大限に活かすことのできる業務モデルをJTRNとして確立するように努めること。

(三)標準メッセージの作成等

上記業務モデル中の各業務単位及び各事業者間で交換される情報の定義を行い、各産業界に必要な情報項目等を検討することにより、JTRN標準メッセージの作成及び保守管理を行うこと。また、各産業界がこの標準メッセージのサブセットの作成が円滑に進められるように努めること。

(四)情報伝達に関する規約の整備

各種の情報をオンライン交換するために、国際規格及び事実上の標準(デファクト・スタンダード)の普及状況等を踏まえつつ、最適な情報伝達に関する規約(通信規約、伝送手順等)を設定し、その普及に努めること。

(五)EDI取引及び業務運用に関する規約の整備

オンライン取引開始に伴う帳票、オンライン併用型のデータ交換による運用の複雑化、各社固有のルールによる運用の煩雑化及び取引上のトラブル等を防止し、省力化を図るため、EDI取引及び業務運用に関するJTRN標準規約を確立するよう努めること。

(六)実施体制の整備

(社)日本ロジスティクスシステム協会及び(財)物流技術センターの共同のもとに、各事業分野において、EDIの適用を前提とした業務モデルの確立、標準メッセージの作成・保守管理を行うとともに、物流EDIの普及等を行うためのEDI推進組織を整備するよう努めること。

(七)企業における利用情報の拡充

取引業務の一層の効率化を図るため、各社の関連情報システムを充実しつつオンラインで交換する情報の種類を拡充し、電子的取引情報交換利用の高度化に努めること。

(八)EDI取引企業の拡大

荷主及び陸上運送事業者等が連携して行う電子計算機の利用価値を高め、物流の高コスト体質の改善を図るために、EDI取引企業の拡大に努めること。

三 実施に当たって配慮すべき事項

(一)中小企業への配慮

国内陸上貨物取引及び輸送・保管には、大規模事業者から小規模事業者まで様々な規模の事業者が携わっており、各事業者が有する電子計算機システム、資金的能力、人的能力にはかなりの差異がある。従って、ビジネスプロトコルの標準化等に際しては、中小規模の事業者に過大な負担を与えることのないよう十分配慮すること。

(二)他業界等への配慮

国内陸上貨物取引及び輸送・保管の分野における電子計算機の連携指針は、単に荷主及び陸上運送事業者等の間の取引だけでなく、これらと取引関係にあるその他の者にまで広く波及する可能性が大きいことに留意しつつ、その基盤となる標準化を進めるとともに、JTRNについては、これを積極的に公開することにより、その普及に努めること。

(三)国際的普及と国際標準化への貢献

EDIの国際的な普及に留意しUN/EDIFACT(Electronic Data Interchange for Administration, Commerceand Transport:行政、商業及び輸送のための電子データ交換に関する国連統一規格)との親和性を確保するよう努めること。
そのため、JTRNを国際的に広く公開するとともに、その内容について国際標準への反映を図り、もって国際標準化に貢献すること。

(四)セキュリティの確保

企業間システムのオンライン化等により、システムダウンや不正介入等の危険にさらされる可能性及びその影響の及ぶ範囲が増大する可能性がある。これらに対処するため、安全性、信頼性の高いコンピュータの導入及び利用環境の整備等セキュリティの確保に努めること。

(五)マンマシンインターフェイスの向上

オンライン取引を行う荷主及び陸上運送事業者等の増大に対応して、検索や加工が容易に行えるよう操作性を確保する等マンマシンインターフェイスの向上に努めること。