1.鉄鋼業
通商産業省告示第百二十一号
情報処理の促進に関する法律(昭和四十五年法律第九十号)第三条の二第一項の規定に基づき、鉄鋼業における電子計算機の連携利用に関する指針を定めたので、次のとおり告示する。
昭和六十一年四月一日
通商産業大臣 渡辺美智雄
鉄鋼業における電子計算機の連携利用に関する指針
我が国鉄鋼業は、これまで大手高炉メーカーを中心に、効率的な販売管理及び生産管理を目指した総合一貫情報管理システムの開発及び導入に取り組んできた。その成果は、需要家の多様なニーズに即応しうる効率的供給体制となって、我が国鉄鋼業の発展に大きく寄与したところである。
特に、昭和四十年代半ば以降、鉄鋼業を巡っては、企業間情報処理システムの高度化が進展した。中でも、ビジネスプロトコルの標準化による効率的な取引情報交換システムの構築及び業界共同データベースの構築において、先進的な取り組みが進められている。すなわち、ビジネスプロトコルの標準化については、(社)鋼材倶楽部を中心として、鉄鋼業と鉄鋼製品卸売業との間の取引情報交換の際の帳票記載項目コード、磁気テープフォーマット等の標準化が推進され、また、業界共同データベースの構築については、(社)日本鉄鋼連盟を始めとする各事業者団体により、各社の経営上の助けとなるべき内外の鉄鋼関連情報の迅速な収集、的確な整備、提供が図られてきたところである。
しかし、取引情報交換システムについては、標準ビジネスプロトコルを採用する企業範囲の拡大、オンラインによる情報授受方式の普及、業界共同データベースについては、情報内容の充実、情報収集、提供方法の高度化といった課題が残されている。
今後、これらの課題を克服しつつ、事業者間で連携した電子計算機の効率的かつ高度な利用を実現することは、鉄鋼業全体の一層の高度化のための基盤を提供するものである。
この指針は、以上の認識に基づき、鉄鋼関連業界における電子計算機の一層の効率的利用を図るため、電子計算機利用高度化計画を勘案し、事業者が連携して行う電子計算機の利用の態様、その実施の方法及びその実施に当たって配慮すべき事項を示すものである。
一 事業者が連携して行う電子計算機の利用の態様
(一)帳票、磁気テープのフォーマット、そこに記載される項目コード、計算方法等のビジネスプロトコルを標準化し、これを用いた「帳票交換方式」「磁気媒体(磁気テープ等)交換方式」又は「企業間オンライン方式」による製造業者及び卸売業者間における取引情報交換システム
(二)情報の体系的な収集、整備及び管理並びにその共同利用のため、各事業者団体が緊密な連携をとりつつ構築する業界共同のデータべースシステム
二 実施の方法
(一(一)について)
(一)標準ビジネスプロトコルの維持、管理業務の充実
次に示されている既存標準ビジネスプロトコルについて、(社)鋼材倶楽部の帳票コード専門委員会を中心に、今後とも、需要家のニーズの多様化、電子計算機システムの高度化等の環境変化に対応したその維持、管理業務の充実を図り、標準ビジネスプロトコルが、その有効性を維持し、また、一層の普遍性を確保するよう努めること。(既に標準化が図られているビジネスプロトコル)
- 注文書、送状、請求書等に関し設定されている三十七項目
- 送状兼請求テープフォーマット
- 請求単価、金額の算出方法
- 鋼材の重量計算方法(普通鋼鋼材)
- 輸出鋼材のオファーシート
- 鋼鋼材用注文書推奨モデル
- 特殊鋼鋼材用注文書推奨モデル
(二)標準ビジネスプロトコルの積極的採用
標準ビジネスプロトコルは、高炉・電炉業者十社及びこれと取引関係にある卸売業者によって採用されているが、その他の製造業者、卸売業者においても、それぞれの情報処理システムの構築、更改等の時期をとらえ、積極的にこれを採用するよう努めること。
(三)オンライン・ネットワークによる情報授受に対応したより広範囲のプロトコルの標準化
オンライン・ネットワークの構築に対応して、既存標準ビジネスプロトコルに加え、情報授受に関する手順及び運用方法の標準化並びに補助帳票類の簡素化等周辺部分の省力化が図られるよう努めること。
(一(二)について)
(四)収録情報の拡充
既に(社)日本鉄鋼連盟、(社)鋼材倶楽部、(社)日本鉄鋼協会それぞれにおいて鉄鋼関連情報の整備が進められてきているが、これらの情報分野の中でもなお充実すべき情報があり、また、今後新たに整備すべき分野の情報もある。このため、次に示される情報その他の整備の必要性の高い情報について、各事業者団体相互が十分連携をとりつつ、収集範囲の拡充及び情報内容の充実を図ること。
- 建設、自動車、機械、造船等各鉄鋼需要産業に関する情報
- 海外の鉄鋼需給に関する情報
- 内外の製鉄、製鋼、圧延設備等、鉄鋼生産設備に関する情報
(五)情報の収集、提供方法の効率化、高度化
オンラインによる情報の収集及び提供を目指し、利用者のニーズに合った情報のより迅速かつ高度な利用ができるような環境を整備すること。
(六)情報提供対象者の拡大
データべースの利用の増大を図るとともに、複数データべースにおける同様の内容の情報の収集、蓄積を回避するため、鉄鋼関連情報を必要とする者が広くこれを利用できるよう情報提供対象者の拡大に努めること。
三 実施に当たって配慮すべき事項
(一)中小企業への配慮
鉄鋼業界及び鉄鋼製品卸売業界は、大規模事業者から小規模事業者までの様々な規模の事業者から構成されており、各事業者が有する電子計算機システム、資金的能力、人的能力等にはかなりの差異がある。従って、ビジネスプロトコルの標準化等に際して、中小規模の事業者に過大な負担を与えることのないよう十分配慮すること。
(二)セキュリティの確保
企業間システム及びデータべースシステムのオンライン化等により、システムダウンや不正介入等の危険にさらされる可能性及びその及ぶ影響の範囲が増大する可能性がある。これに対処するため、安全性、信頼性の高い電子計算機システムを設置する等セキュリティの確保に努めること。
(三)マンマシンインターフェイスの向上
データべースに関して、利用部門の拡大や利用頻度の増大に対応して、検索や加工が容易に行えるよう操作性を確保する等マンマシンインターフェイスの向上に努めること。
(四)機器システム間の相互運用性の確保
業界内各社、他業界データべース、海外データべース等とのオンライン化にも対応しうるよう、今後の情報システムの構築に当たっては、情報システム相互間の相互運用性に配慮しつつ取り組むこと。