一般財団法人日本情報経済社会推進協会

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9.電機4団体(電子、電気、電線、電力)

通商産業省告示第三百六十四号
情報処理の促進に関する法律(昭和四十五年法律第九十号)第三条の二第一項の規定に基づき、電線製造業、電子機器製造業、電気機器製造業及び電気事業の四事業分野間における電子計算機の連携利用に関する指針を定めたので、次のとおり告示する。
平成三年十月一日
通商産業大臣 中尾 栄一

電子、電気、電線、電力の四事業分野間における電子計算機の連携利用に関する指針

電線製造業、電子機器製造業、電気機器製造業及び電気事業の四事業分野は、相互に密接な取引関係を有していることから、従来より、相互の資材調達及び製品販売等の効率化を目指して情報処理システムの開発及び導入に取り組んできた。その成果は、需要家の多様なニーズに即応し得る効率的な供給体制の実現として、四事業分野の発展に大きく寄与してきたところである。
このような情報化の進展の中で、EDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)は、産業活動の基盤としてとりわけ重用度を増してきている。これまで、EDIは各事業分野ごとに導入されてきており、これに対応して「電気事業における電子計算機の連携利用に関する指針」(昭和六十二年通商産業省告示第二百八十六号)及び「電子機器製造業における電子計算機の連携利用に関する指針」(昭和六十三年通商産業省告示第二百二十九号)が策定されている。その成果として、電気事業においては「資材発注業務ビジネスプロトコル標準」・「電気料金収納業務ビジネスプロトコル標準」が、また、電子機器製造業においては「EIAJ取引情報化対応標準」がそれぞれ策定されるなど電子計算機の連携利用が着実に進展している。
特に、「EIAJ取引情報化対応標準」は、国連において国際標準ビジネスプロトコルとして開発及び普及が進められているUN/EDIFACT(Electronic Data Interchange for Administration, Commerce and Transport:行政、商業及び運輸のための電子データ交換に関する国連統一規則)や米国のANSI X.12(米国規格協会〔American National Standards Institute〕が定めた米国標準ビジネスプロトコル)と同様、多様な事業分野における利用に適した構造となっており、四事業分野相互間における電子計算機の連携利用のための条件が整いつつある。
これを反映して、既に電気事業と電線製造業の間及び電子機器製造業と電線製造業の間で、取引のEDI化のためのビジネスプロトコルの標準化の検討が進められるなど業際的な標準化の動きが活発化しており、このような動きは今後ますます四事業分野全体に本格的に拡大していくとともに、他の事業分野へも波及していくことが予想されている。
このような状況下、今後の課題は、平成三年三月情報処理振興審議会産業の情報化部会報告「連携指針の今後の在り方」が指摘するように、「EDIの業際化・国際化」、すなわち、業際的・国際的な相互運用性が確保された「開かれたEDI」の実現であると考えられる。
この指針は、以上の認識に基づき、電線製造業、電子機器製造業、電気機器製造業及び電気事業において電子計算機を効率的に利用し、生産及び流通の一層の高度化を図るため、電子計算機利用高度化計画を勘案し、事業者が連携して行う電子計算機の利用の態様、その実施の方法及びその実施に当たって配慮すべき事項を示すものである。そして、これに基づく四事業分野における標準化は「開かれたEDI」の実現を目指し、四事業分野における標準化の成果、経験等を踏まえて、今後さらに他の事業分野においても適用可能なモデルとなることを指向するものである。

一 事業者が連携して行う電子計算機の利用の態様

この指針の目的は、固定的なEDIシステムを構築することではなく、ビジネスプロトコル等を標準化することにより、ネットワークの拘束性を排した自由なEDIの利用を実現することである。
したがって、事業者は具体的なEDIのネットワークに関して、個々の事業分野ごとの情報化の進展度合いに応じて、共同のネットワークの構築や情報ネットワークサービス事業者が提供する汎用データ交換サービスの利用等最適なネットワークの構築及び利用を行うこととなる。
この指針に基づいて作られるビジネスプロトコル等の標準は、EDIの業際的な標準の確立に貢献するものとして位置付けられる。

(一)ビジネスプロトコルの標準化

(1)シンタックスルール

四事業分野共通のシンタックスルール(電子データ交換に用いる構文規則)として、(財)日本情報処理開発協会/産業情報化推進センター(JIPDEC/CII)において開発されたCIIシンタックスルールを採用することにより、標準化の促進に努めること。このため、CIIシンタックスルールに対応したトランスレータ(各企業固有のデータフォーマットとCIIシンタックスルールによるデータフォーマットとの相互変換を行うためのソフトウェア)を積極的に導入するよう努めること。

(2)データ項目及び標準メッセージ

業務単位と情報の種類を定義し、これを踏まえて、各事業分野ごとに標準メッセージの内容としてどのようなデータ項目が必要かを検討すること。
また、各事業分野間で共通のデータ項目については、同一の項目番号とするなど必要な調整を行うとともに、そのメンテナンスも共通に行うよう努めること。
以上の検討及び調整に当たっては、各事業分野における取引の特性を十分に反映しつつ、各事業分野間の標準メッセージ及びデータ項目を同一体系の標準として構成するよう努めること。

(3)企業コード

データ項目の中でも特に企業コードは業際的な汎用性を高めるため、(財)日本情報処理開発協会/産業情報化推進センターが管理している標準企業コードを採用するよう努めること。

(4)国際取引等におけるUN/EDIFACTの採用

EDIの国際的な普及の進展に留意し、国際取引等においてはUN/EDIFACTを積極的に採用するよう努めること。

(二)OSIの導入

効率的かつ効果的な「開かれたEDI」を実現するためには、システム間の相互運用性のより一層の向上、運用機能の向上、多様な通信回線の利用可能性の拡大、データの保全性の向上が課題である。
このような状況を踏まえ、OSI(Open Systems Interconnection:開放型システム間相互接続)製品やOSIの導入を容易化する新しい手順(「F手順」等)を積極的に導入するよう努めること。

(三)EDIシステムの運用についてのガイドライン

EDIシステムの円滑な運用を実現するため、システムの運用時間、メッセージの送達確認、システム運用状況の確認等EDIシステムの運用の在り方についてのガイドラインを策定するよう努めること。

(四)EDIを前提とした業務モデルの確立

EDIを導入した企業が、EDIのメリットを十分に享受するためには、従来の帳票の交換を基本とした業務の在り方から脱皮し、EDIの活用に適した業務の在り方が導入される必要がある。このため、EDIによって取引を行う際の業務の進め方についてのモデル(業務モデル)を確立するよう努めること。

(五)組織体制の整備

(1)各事業分野及び各事業分野間におけるEDI推進組織の整備等

各事業分野において、標準の作成、標準ビジネスプロトコルのうちのサブセットの保守管理並びにEDI及び標準ビジネスプロトコル等の普及を行うためのEDI推進組織を整備すること。
各事業分野間については、四事業分野全体の調整・統合を行う組織を設け、そのイニシアティブのもとに調整を進めること。
以上のいずれについても、具体的な標準化作業には、システム及び業務の両方の実務者が参加すること。また、各事業分野のトップレベルが標準化のイニシアティブをとること。

(2)(財)日本情報処理開発協会/産業情報化推進センターの役割

(財)日本情報処理開発協会/産業情報化推進センターは、各事業分野又は各事業分野間における検討及び四事業分野全体としての標準化の調整・統合に参画すること。また、各事業分野におけるEDI推進組織と連携して、EDIの導入指導、標準ビジネスプロトコルのメンテナンスに関連する情報の提供等を行うことにより、EDI及び標準ビジネスプロトコル等の普及に努めること。

三 実施に当たって配慮すべき事項

(一)セキュリティの確保

EDIシステムの普及に伴い、システムダウンや不正介入等の危険にさらされる可能性が増大するとともに、そのような結果の発生は取引等の遂行に重大な影響を及ぼすこととなる。これらに対処するため、データの高度な機密性・完全性保持機能及び高度な利用可能性(アベイラビリティ)を有する電子計算機システムを構成する他、パスワード管理・ID管理等運用面での十分な対策を講ずることによりセキュリティの確保に配慮すること。

(二)中小企業への配慮

効果的なEDIを実施するためには、中小企業を含めた広範な事業者にEDIシステムが導入される必要がある。このため、各事業者の情報化の水準、人的・資金的能力に差異があることを踏まえ、パソコン対応のトランスレータの開発・普及、情報ネットワーク事業におけるトランスレータの普及等により、EDIシステムの導入に際し中小企業に過大な負担が生ずることがないよう配慮すること。

(三)国際的な開放性の確保

EDIは国際取引においても活用されるようになっている。また、国際標準としてのUN/EDIFACTの開発・普及も進展している。このような状況を踏まえ、国際的な標準化の動向と調和がとれた標準化を進めることにより、外国企業あるいは外資系企業のアクセスを確保するよう配慮すること。

(四)他業界への配慮

この四事業分野における標準化の成果は、四事業分野にとどまらず全産業分野に幅広く普及すべきものであることから、データ項目をはじめとする標準ビジネスプロトコルの公開・使用の開放等を積極的に進め、業際的な標準の確立に資するよう配慮すること。

(五)EDIを巡る当事者間の契約関係の明確

EDIによる取引が安定的に行われるようEDI取引に係る契約書を整備すること等によりEDIを巡る当事者間の契約関係を明確にするよう配慮すること。