レポート

データ利活用に係る経済産業省の取組
(オープンデータ、ID連携トラストフレームワーク)
経済産業省 商務情報政策局
情報政策課 情報プロジェクト室長 和田 恭 氏

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政府、自治体、民間によるオープンデータの取組

 近年、政府および自治体は、行政機関の持つ様々な情報を再配布/再利用・商業利用可能な、コンピュータで加工しやすい形で公開していこうというオープンデータの取組を積極的に進めている。オープンデータの推進は、交通、気象など様々な分野での新たなサービスの創出や、財政、生活、インフラ、防災など生活に密着した社会的な課題の解決につながる。日本では、平成23年の東日本大震災の際に、必要な情報が電子化されていなかったり所在不明であったりして有効に活用できなかった実態があり、その問題意識がオープンデータ推進の一つの原動力となった。
 実際に東日本大震災の後には、電力需給状況について経済産業省が取りまとめて公開した情報を利用したモバイルアプリが開発され、物資支援要望のマッチングサイトや安否確認、通行情報など、官民の情報を利用した様々なサービスが活躍した。また、経済産業省は、国、県、市町村それぞれの支援制度を一括検索できる復旧・復興支援制度データベースを作成した。
 日本のIT戦略におけるオープンデータの位置づけとしては、IT戦略本部で、平成24年に電子行政オープンデータ戦略とロードマップを策定し、平成26年6月の「世界最先端IT国家創造宣言」においては、オープンデータが主要な柱の一つとして位置づけられた。
 世界的な取組としては、平成26年6月に開催されたG8サミットで近年では初めてITが主要な議題となり、首脳宣言にオープンデータの推進が明記され、具体的な取組内容やスケジュールについて「オープンデータ憲章」として合意された。また、各行政機関がどのような情報をどこで公開しているかなどを分かりやすくまとめた「データカタログ(ポータル)サイト」が欧米をはじめ46か国で作成されている。
 日本では、政府データカタログサイト「DATA.GO.JP」を平成26年10月から運用開始し、各省庁がWeb サイトで公開するコンテンツの統一ルールとして「政府標準利用規約(第1.0版)」を策定した。また、東日本大震災の際に課題となったが、様々な組織間の情報交換を円滑化するためデータの標準化が必要である。具体的には、「ボトルウォーター」や「水」といった用語を同じ「飲料」として整理したり、「公民館」という用語を「一次避難所」という属性情報を持つものとして整理したりすることが重要であり、データ構造と語彙の共通化・マッピングの仕組みとして、「共通語彙基盤」の整備に取り組んでいる。経済産業省はどの分野でも利用される普遍的な語彙を「コア語彙」として整備し、分野固有の語彙については、既存の語彙体系を尊重し、各省庁にも協力いただきながら整備していきたいと考えている。

図1

オープンデータを利用したビジネス展開を取り巻く状況

 国民生活に密着したサービスを行うためには、全国に1,700ある自治体が持つ情報の公開が必要となるため、政府は、自治体の取組への支援を強化し、IT戦略本部 電子行政オープンデータ実務者会議の下に自治体普及作業部会を立ち上げ、自治体特有の課題を整理した「自治体オープンデータ推進ガイドライン」の策定を進めている。Webサイト上で公共データを公開している自治体は80以上あり、独自のデータカタログサイトを運用しているところもあるなど、自治体によるオープンデータの取組も積極的に進められている。また、オープンデータを活用したアイデアソン、ハッカソンが民間、自治体、政府などの主催で多数開催されている。

オープンデータを利用したビジネス展開に向けた方向性

 このようにオープンデータへの取組が進む一方で、各地で開催されたイベントで創出された様々なアイデアやアプリなどの成果がデータとして蓄積・継承されない、ビジネス展開のためには行政機関の公開情報と民間の情報とのマッシュアップが必要、といった課題があった。そこで、経済産業省では、オープンデータを活用したアイデア、アプリやサービスを創出した人材とビジネス化を支援する人材のマッチングの支援を進め、マッチング支援サイト「Knowledge Connector(β版)」を平成26年11月から運用開始し、人材マッチングイベントを12月に開催した。

図2

ID連携トラストフレームワークの取組について

 個人情報を利用した様々なインターネットサービスが拡大するなかで、現在は、複数サービス間でのユーザーID とパスワードの使いまわしや、登録手続きの複雑さ、サービス間連携や安心を提供する仕組みの未整備といった課題がある。
 ID情報を用いたITサービスへのニーズは大きく、外国人旅行者への、ハラル食を提供するレストランの案内など、国籍、宗教、嗜好などの属性情報に応じたパーソナライズされたサービス提供や、通信事業者・ISPが保有する個人情報の他サービスとの連携など様々な検討が進められている。現在も事業者間のポイント連携などが相対取引として行われているが、事業拡大の際にどの基準を適用するかなどについて手探りで行われている状況がある。
 そこで、経済産業省では、安全・信頼性と簡便性を両立した枠組みの中で、個人の様々な属性情報(アイデンティティ:ID)をアイデンティティ・プロバイダ(IdP)が管理し、トラストフレームワークを締結した事業者(リライング・パーティ:RP)が必要な情報のみを受け取りサービス提供を行える仕組みとして「ID 連携トラストフレームワーク」の構築を推進している。

図3

ID連携トラストフレームワークのビジネスへの適用

 政府分野では、マイナンバー制度に関連して平成29 年1 月から運用予定のマイポータルを実現するために、同ポータルに登録される情報を、民間事業者によるビジネスと連携させたり、行政手続きのワンストップ化実現のために他の属性情報と連携させたりするためID連携トラストフレームワークを適用できる可能性がある。民間分野では、ID 連携トラストフレームワークを利用することにより、サービス事業者による利用者の属性情報の取得や本人確認のコストの低減、安全性向上につながることが期待される。
 経済産業省では、平成25年度事業で、ID連携トラストフレームワークの基準案を策定し、平成26年度事業で、訪日外国人に、観光情報や無料Wi-Fiを提供して登録してもらうセンシティビティの低い情報の利活用と、MVNOサービス事業者が持つセンシティビティの高い個人情報の利活用をそれぞれ検討する2つの実証実験を、現在進めている。日本では初めての実個人情報を利用したID連携の実証実験であり、必要な本人確認の厳格さの程度が大きく異なる、この2つの実証実験を通して、課題を抽出していきたい。
 個人情報を使った様々なサービスが創出され普及するなかで、ID 連携へのニーズは今後一層拡大していくと考える。今後とも皆様に、オープンデータとID連携トラストフレームワークに関する取組をご支援いただきたい。

  • 2015年1月20日 第44回電子情報利活用セミナー「経済産業省の平成27年度IT関連施策」