レポート

高精度測位技術を活用した
ストレスフリー社会の実現に向けて
国土交通省 国土政策局
国土情報課長 西澤 明 氏

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東京オリンピック・パラリンピック開催に際しての課題

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックの主要な競技施設は半径8km以内にコンパクトにまとまっているが、空港、ホテル、競技場などの間の円滑な移動が不可欠である。選手・役員・メディア関係者は専用のバス・ミニバンによる輸送システムを利用するが、大会スタッフやボランティア、観客はすべての公共交通機関を利用することになっており、世界にも類を見ない高密度な東京の鉄道網を利用することになる。さらに東京圏のターミナル駅は複雑な立体構造を成しており、地下空間・屋内空間での案内の整備も不可欠である。現在でもスマホ等を利用したナビシステムの利用が進んでいるが、十分であるとは言えない。
 また、災害が発生した場合の避難誘導も課題である。豪雨による地下街への浸水、首都直下地震の危険性等がある中で、地震に不慣れな国からの来訪者も含め不安を解消し安全を確保できるよう適切な情報提供が必要とされる。

最近の測位技術等

 現在の屋外測位技術は、GPS単独で屋外測位時の誤差10mほどであるが、2018年には準天頂衛星が4機体制となり、アジア全域をカバーし、スマホでも誤差30cm~1mまで測位技術が向上すると期待されている。屋内の測位技術は複数の手法がありそれぞれ一長一短があるものの複数の手法を組み合わせることによって誤差30cm程度の測位が今後可能になると期待されている。

高精度測位社会プロジェクトで目指す姿①ナビゲーション

 現在は、外国人や不慣れな人々は改札を出ても行き方が分からず案内標識前でスマホ等をみながら滞留することが多いが、東京オリンピック・パラリンピック開催時には、出発地から目的地まで交通経路だけでなく、屋外・屋内の歩行ルートも含めた一貫したナビゲーションシステムの実現を目指している。

高精度測位社会プロジェクトで目指す姿②防災・減災

 東日本大震災発生時では、災害発生時に適切な情報を受けとることができず駅等に人が集中し大混雑が発生した。災害発生時に、屋内外どこにいても災害発生時に適切な情報を受け取ることができ、自身の位置に応じた適切な避難場所に避難できるようにすることが目標である。また、複数の管理者にまたがる地下空間などにおいて、災害の状況などを共有できる仕組みも必要である。

東京駅周辺高精度測位社会プロジェクトの取組

 東京オリンピック・パラリンピックに向けて特に重要となる東京駅周辺において、先行的に空間情報インフラを整備し、これを活用したサービス創出に関する実証事業に着手した。屋内外測位精度が十分でないこと、施設管理者ごとに地図が整備・更新・公開されておりシームレスな地図を作る仕組みがないこと、さらには、屋内の測位基盤や電子地図を維持・更新する仕組みの確立といった課題の解決に向けて、平成26年9月10日、第1回「東京駅周辺高精度測位社会プロジェクト検討会」を開催した。本年度は、プレ実証実験を実施、電子地図、歩行者ネットワークデータ、測位環境インフラ等の空間情報インフラの整備・メンテナンス手法、ビジネスモデルについて検討を行い、来年度は東京駅周辺で面的な実証実験を行う予定である。現在、今年度の実験及び検討に協力いただける団体を募集している(2014年10月6日応募締切)ので、是非参加していただきたい。

オリンピック・パラリンピック開催までのサービス実現の鍵

 サービス実現の鍵の1つ目は、測位環境インフラ、電子地図インフラ等のオープン化である。特にナビゲーションシステムが限られた人にしか使えないものであっては意味がない。オープンデータ化され、外国人も日頃使い慣れているサービスの中で整備され、多くの人々に使われることが大事である。2つ目は、測位環境インフラ、電子地図インフラ等を継続的に維持・管理する体制の確立である。これらのインフラを整備しても、それが継続的に維持・管理されなければならない。そのための人・資金を確保するビジネスモデルの構築が必要である。3つ目は、様々な取り組みの連携である。各施設、各事業者、限定された地域それぞれで整備しては意味がなく、目指すサービス実現には国、自治体、複数の施設管理者、情報通信事業者、交通機関、地理空間情報に関わる諸団体等の横連携を図る組織が求められる。

高精度測位社会プロジェクトの東京オリンピック・パラリンピック後の位置づけ

 高精度測位技術を活用したサービスは、東京オリンピック・パラリンピック開催のためだけに実現するものではなく、開催後も訪日外国人旅行客の増大を図るためのサービスインフラとして重要である。また、今後進展する測位サービスと空間データを高度に活用する社会の一環を担うものである。

  • 2014年9月19日 第41回電子情報利活用セミナー「位置情報と人流・観光ビジネス」