レポート

データ利用と情報管理
JIPDEC
常務理事 坂下 哲也

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 政府では、現在「データ活用」が政策の中心となっている。2012年からのデータ活用に関する政策の中で、JIPDECでは以下の2つに注目している。

  • 2014年「ネット意識革命宣言」
    認知度は低いレポートだが、対面・書面交付原則の見直し要望に対するもので、この延長線上でマイナンバー活用等などが検討されてようになったのではないか。
  • 2016年「成長戦略の進化のための今後の検討方針」
    政府が提唱する第4次産業革命の中でどのような規制改革を行っていくかが示されている。この後、IOT推進ラボIOTラボSelectionを通じて、訪日観光客に対する旅館業法上の規制緩和(パスポートの写しの保管義務)、スマートフォンによるタクシーメーターを可能とする「電子的封印」要件の明確化、保育所で作成が必要な文書の電子化等が具体的に実施されている。

第4次産業革命の位置づけ

一般的に、インダストリー4.0と言われる第4次産業革命に至るこれまでの産業変化の流れを見ると、動力の獲得、ITの利用、データの利用と流れてきているのがわかる。

機械同士がつながる

 では、第4次産業革命の中で言われる「機械同士がつながる」とは一体どういうことなのか?例えば、製造ラインの様々な場所にセンサーを取り付け、故障の可能性がある箇所を通知することで予防保全につながる。また、これらのデータを集積・解析することで使用パターンごとの部品の耐用年数も把握が可能となる。従来は工場などものづくりの現場におけるIOTの利用事例が多い。最近では他の分野にも導入がされ始めた。具体的には、米国のCohealoが行っている医療設備共有サービスは興味深い事例である。病院にある高額医療機器類の稼働率が低い点に着目し、ネットワークに接続してスケジューリングしてレンタル可能とするサービスを提供するものである。これによって、機器を貸す病院(新たな収入)、借りる病院(コスト圧縮)、患者(治療機会の増加)すべてにメリットがもたらされる。
 こういった仕組みが可能になることで、ビジネスモデルも変化してくる。従来は、開発コストから提供価格を割り出していたが、現在は稼働に対する課金モデルが顕在化している。遠くない未来には、センサーデータや交通量、気象データ等が一元管理されAIによる判断材料がそろいロボットによる工事が可能となり、年間の維持管理に9兆円ともいわれるインフラ整備費用(上下水道や電気といった地下埋設物や道路、橋梁等)の効率化を図ることも可能となってくるだろう。

未来のロボット工事の実現

サービスのパーソナライズ化

 FINCが提供している遺伝子検査を用いた成果保証型ダイエット家庭教師サービスでは、オンラインで自分の食生活や運動している姿を栄養士やトレーナーといったクラウドワーカーが見て助言を行う。クラウドワーカーの多くは副業だそうだが、安定した収入が得られるモデルになっている。
 また、海外観光客に対する観光ガイドのマーケットプレイス「Vayable」は、約6万人が登録しており5,000~6,000の現地案内サービスが提供されるものだ。このように、インターネットを利用し、情報空間において様々なものをマッチングし、現実空間のサービスとして進めるものが増加している。
 例えば、あるメーカーからは、洗練された日本の消費者(生活上の問題が無い国の消費者)に対して製品・サービスを提供していくためには”個”を知った上で、機能設計を行う必要があるという意見があった。そのためには異業種と連携することが必要不可欠だが、企業にとってデータ利用に関する悩みは多く聞かれる。
 IoT推進ラボでは、異業種の企業をニーズとシーズで引き合わせる場づくりや、データ利用における課題についてヒアリングを行い、具体化に向けた助言をする機会提供をしている。

課題と展望

 今後、検討が必要になると思われる課題としては、以下の2点がある。

  • データに対する信頼性の尺度の必要性
    ENISAでは、提供者の信頼性、デバイスやセンサーが創出するデータの信頼性、デバイスやセンサーが仕様通り稼働する信頼性に関する検討を行っているが、同じ観点で我が国も考える時期ではないか。
  • データの所有権、財産権の検討
    現在、パーソナルデータストアのようにデータを集める、または個人の情報を預かって使うという議論がなされており、また、事業者の中でも具体化に向けた検討を行っているところがみられる。そのような検討を行っている事業者からは、データを財産として預かるための制度設計や、データの経済価値(流通価格など)の検討を求める声がある。特に、後者は、今後、データ市場が具体化されるとした場合、経済価値算出について一定の尺度がないと混乱を生じる可能性があるのではないか。

 また、最近の動向としてこれまで、OpendeskやPaperhouseなどのようにオープンな環境でのデータ利用も進んできており、今後は消費者も参加した形でデータをシェアしながら活用するという方法も考えられる。
 アメリカの社会学者シェリー・アーンスタインが提唱した「住民参加の梯子」に、データ利活用を想定したビジネス照らすと、社会的な目的等について、消費者にきちんと説明し、参加を促し、事業も活性化することができるのではないかと考えている。
 匿名加工情報は手段あって、事業者の目的ではない。センサーの発達によりこれまで測れなかったものを測れるようになった今、これまで対面してきた顧客や取引先の姿をより鮮明にとらえながら、ニーズオリエンテッドにビジネスを進めていく必要があると考える。

 

本内容は、2016年12月6日に開催されたJIPDECシンポジウム「第4次産業革命と情報連携-これからの情報活用とプライバシーを考える-」での講演内容を取りまとめたものです。