2018.06.19
レポート
自治体Webサイトで利用されているドメインの種類の状況
「なりすまし」 されないために できること
筆者:一般財団法人日本情報経済社会推進協会
インターネットトラストセンター 企画グループ
高倉 万記子
JIPDECが運用するサイバー法人台帳ROBINSには、都道府県と市区町村併せて1,788の自治体のWebサイト(以下「サイト」)のURL(2015年10月時点)が登録されています。今般、それらのURLのデータの更新を行ったところ、ドメインについて、以下のことがわかりました。
自治体サイトのドメインの利用は?
【表1:自治体サイトで利用されているドメインの種類とその利用率】
| 
 | 2015年10月時点調査 | 
 | 2018年5月時点調査 | 増減 | 
|---|---|---|---|---|
| lg.jpドメイン | 583(32.6%) | ⇒ | 636(35.6%) | +53 | 
| 都道府県型JPドメイン | 1,043(58.3%) | ⇒ | 1,004(56.2%) | -39 | 
| その他のJPドメイン | 125(7.0%) | ⇒ | 115(6.4%) | -10 | 
| JPドメイン以外 | 37(2.1%) | ⇒ | 33(1.8%) | -4 | 
| 合計 | 1,788(100%) | 1列> | 1,788(100%) | 1列> | 
その他のJPドメインのなかには、任意団体が登録できる”gr.jp”を使っているところ、ネットワークサービス提供者が使う”ne.jp”、財団法人や社団法人など企業以外の法人が使う”or.jp”を使っているところもありました。それ以外は、ドメインに市区町村名と都道府県名を含む”地域型JPドメイン”が散見されました。
上記以外には自治体名に記号と別の文字を付与するなど、命名に規則性が見受けられませんでした。
(例)city-自治体名.jp、webtown.自治体名.jp、自治体名.e-地域.jp
また、ドメイン名から当該自治体名を想起できないものもありました。
上記の内訳は表2に記載します。
【表2:その他のJPドメインの種類別内訳】
| 調査ドメイン | 2015年10月時点調査 | 2018年5月時点調査 | 
|---|---|---|
| gr.jpドメイン | 2 | 2 | 
| ne.jpドメイン | 4 | 3 | 
| or.jpドメイン | 3 | 3 | 
| 上記以外のjpドメイン | 116 | 107 | 
| 合計 | 125 | 115 | 
自治体サイトにおけるJPドメイン以外の利用状況は?
JPドメイン以外では、表3のとおり世界中誰でも取得できる”comドメイン”や”netドメイン”、 ”infoドメイン”、非営利団体用途であったが今では事実上取得制限なしの”orgドメイン”、 多くの映像関連サイトで使われる”.tvドメイン”の利用が確認できました。
【表3:JP以外のドメインの種類別内訳】
| JP以外のドメイン | 2015年10月時点調査 | 2018年5月時点調査 | 
|---|---|---|
| tvドメイン | 1 | 1 | 
| comドメイン | 18 | 16 | 
| netドメイン | 9 | 9 | 
| infoドメイン | 1 | 0 | 
| orgドメイン | 8 | 7 | 
| 合計 | 37 | 33 | 
自治体で利用していたドメインが再利用された事例
市区町村名と都道府県名を含む地域型JPドメインは、2012年4月以降、新規登録はできなくなっておりますが、継続して利用ができるため、現在も自治体では利用されています。
しかしながら、地域型JPドメインは都道府県型JPドメインと混同しやすく、都道府県型JPドメインは個人でも組織でも日本に住所があれば誰でも登録できるため、なりすましサイトが作られやすいリスクがあります。
自治体は、なりすまされないようにlg.jpドメインを使うのが理想ですが、2002年にlg.jpドメインが新設されてから15年以上経っているものの、まだまだ移行が進んでいないのが現状のようです。
しかしながら、自治体のサイトは信頼されたサイトとして公知され、ドメインが検索サイトで上位に表示されやすい性質があります。
ここ数年でも、使っていたドメインを手放したところ、第三者に取得され、役所のサイトを装ったギャンブルサイトになっているケースがいくつか確認されています。
(例)岩手県の国体サイトで使っていたドメインが第三者に使われている事例

図1:いわて国体ホームページにおける注意喚起

図2:いわて国体ドメインを利用したサイト事例
最後に
住民から信頼されるべきサイトがあったはずのアドレスが、このような公序良俗に反するサイトになってしまうと、その自治体への信頼を失墜させることに繋がりかねません。住民が悪意のあるサイトにアクセスして詐欺被害等に遭うことも考えられます。気軽に独自ドメインを取得すると、このような事例の当事者になることもありますから、ドメインは一定期間保持した後に解約することも大切ですし、何よりドメインの取得には慎重になることも大切です。そもそもこういったことにならないためにも、地方公共団体は地方公共団体などしか取得ができないlg.jpドメインを利用することです。
2018年6月掲載