レポート

仮想通貨を巡る法制度の最新動向

創法律事務所
代表弁護士 斎藤 創氏

仮想通貨の2017~2018年

創法律事務所 斎藤様

 2017年は「仮想通貨元年」といわれ、非常に仮想通貨が盛り上がった年だった。ビットコイン、アルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨)ともに価格が急騰し、ICO (Initial Coin Offering、仮想通貨を使って資金調達をすること)も昨年頃から非常にブームとなり、仮想通貨交換所のビットコイン取引量は昨年1月の5,400億円から昨年12月には13兆4,000億円と約25倍に増えた。とはいえ常に順調だった訳ではなく、ビットコイン分裂への懸念や、中国でICOと仮想通貨取引が禁止されたことなどから価格の上下変動は激しかった。

 2018年はコインチェック事件、各国の規制強化、ICOブームの沈静化などから価格が下落しており、仮想通貨にとって調整/試練の年に現状なっている。

仮想通貨交換業者の動向

 日本で仮想通貨交換業に参入するには、昨年4月から登録が義務付けられているが、昨年3月31日までに仮想通貨交換業を営み、昨年9月までに登録申請が受理された事業者は申請の許可もしくは却下が確定するまで事業を継続しても良い「みなし事業者」とされている。みなし事業者はかつて16社存在したが、コインチェック事件後政府の指導が厳格化したこともあり、16社のうち8社は撤退等している。

 一方、市場のボリュームや法制度がしっかりしていると見られたことなどから仮想通貨交換業に新規参入を希望する企業は多く、その中には中国、旧ソ連などを初めとする外国企業も多数存在している。現在約100社以上あると言われる申請中事業者のうち日本企業と外国企業が半々程度という印象を受けている。

 こうしたビットコインの価格上昇や日本市場への参入が活発な背景には、仮想通貨法(改正資金決済法)の成立が影響していると言われている。仮想通貨法の成立で仮想通貨交換業者への登録が義務付けられたことで、ユーザーはある程度安心して取引でき、仮想通貨交換業者は金融機関の口座開設が容易になるなどビジネスをスムーズに行えるようになった。

仮想通貨法について

 2016年4月に成立した仮想通貨法(改正資金決済法)は、仮想通貨と金銭の交換(売買)、仮想通貨と他の仮想通貨の交換、それらの媒介等を行う「仮想通貨交換業者」に対して金融庁への「登録」を求めるとともに、分別管理やコンプライアンス、内部監査などを求めている(図)。単なる仮想通貨投資家や、単にウォレットのみ、単にブロックチェーンのサービスを提供する場合は規制対象外である。

 仮想通貨法では第2号仮想通貨を、ビットコインなどの第1号仮想通貨と相互に交換できる移転可能な電子データであり、日本円など通貨建資産を除くと幅広く定義しており、ICOトークンなども含まれる。

 海外の仮想通貨交換業者であっても日本居住者に勧誘を行う場合は日本の規制に服さなければならない。「勧誘」の定義は広く、インターネット取引所で特に日本語サイトがあればほぼすべて勧誘に相当する。今年3月には世界最大のBinanceという取引所が登録なく日本の消費者に勧誘を行ったとして金融庁より警告を受けている。

仮想通貨法の運用の変遷

 仮想通貨法の制定時の趣旨は、比較的資金の制約があるベンチャー企業でも事業が可能で、かつ仮想通貨市場の成長を温かく見守ることであった。しかし仮想通貨の高騰やコインチェック問題を受けて仮想通貨交換業者に対する審査目線が大幅に厳格化し、同社を含むみなし事業者、登録業者全社に対して立入検査が行われた。2018年4月からは、金融庁に有識者からなる仮想通貨交換業等に関する研究会が設置され、今後必要となる規制を含めて話し合われている。また、仮想通貨登録業者16社が加盟する仮想通貨交換業協会も2018年4月に正式発足し認定自主規制団体を目指すなどの動きがある。

ICOについて

 ICO (Initial Coin Offering)とは、コインやトークンと言われるものを売却して資金調達することをいう。ICOと言った場合、1. 取引所への上場を指すか、2. それ以前のトークンセールを指すかは人により異なるが、本日は主として後者を指す。

 テレグラムというSNSがICOで1,700億円を調達するなどICOは世界的に大ブームである。ICOには、全世界から多額の資金調達が可能、有望ベンチャーにかなりの初期段階から直接投資ができるといったメリットがある一方で、多くの詐欺が横行しているという問題もある。

 ICOで発行されるトークンには主に、1. プログラムやサービスで使用できる「Utility Token」、2. 配当を受けられる「Security Token」、3. ビットコインのようにPaymentで使用できる「Payment Token」があり、日本では2017年11月頃までUtility Tokenには何の規制もないと解釈されていた。しかし、同年12月よりICOのトークンで少しでも上場の可能性があるものについては幅広く仮想通貨に該当すると金融庁が解釈しており、日本での販売には仮想通貨交換業の登録とトークンの届出が必要とされた。そのため、現在日本でICOを発行するには、1. 発行体が登録を受けて販売する、もしくは2. 他の仮想通貨交換業者に販売を全面委託して行う、という方法しかない。

 1. については要件を満たせば登録可能だが、上述の仮想通貨登録業者と同様の審査をパスしなければならず、ICO前のベンチャー企業が登録を受けるのは厳しいと見られている。2. については現在16社ある登録業者の主要ビジネスはInternet Exchangeであり、ICOトークンの取扱いには消極的と思われ、またICOトークンを取り扱うための追加の体制整備を求められるが監督当局でもこの基準がまだ決定さていないと聞いている。そのため日本国内ではまだどの事業者もICOトークンを販売できる状態にない。

ICOと税務・会計

 ICOトークンの販売は売り上げになると言われており、売上から経費を引いた残りが利益として法人税が課税される(実行税率30.86~34.81%)。従って普通のファンドや株式による資金調達に比べて不利と言われている。
 
 会計上はICOトークンをユーザーが購入した時点で税務的には売上が立つが会計的に売上が立つタイミングが違うと言われており、依然明確になっていない。また、上場会社の場合、監査法人から適正意見を受けなければ上場を維持できないが上場会社がICOを実施して適正意見をもらうのはかなり難しい。すなわち、世界的なICOブームとはいえ、日本ではICOによる資金調達は仮想通貨交換業の登録と税率、会計の厳しさから現在は難しい状況にある。

まとめ

 日本の仮想通貨法はもともと先進的であったが、2017年4月に施行された法律が現実に追い付いていない側面もあり、より精緻な自主規制が必要という声もある。仮想通貨業界は非常に動きが早いので適切な規制/自主規制によるマーケットの醸成が必要であろう。