レポート

デジタルビジネス社会を支えるサービスストラテジの本質
~ISO/IEC 20000でサービスストラテジを実現~
ITSMS専門部会委員
(株式会社アズジェント セキュリティ・プラス ラボ シニアフェロー)
 
駒瀬 彰彦 氏

デジタルビジネス社会を支えるサービスストラテジ

 提唱されているデジタルビジネス社会とは、サイバー空間とフィジカルを巧みに組み合わせ実社会で適切なサービスを提供する社会インフラの創造であるが、わが国はIoT、AIといったデジタルテクノロジーを組み合わせて新たなビジネスをデザインするという点で他国に後れをとっている。
 政府が目指すSociety5.0(超スマート社会)の実現のためにも様々な業種、企業、人、機械(もの)、データなどがつながって(Connected Industries)、AI等によって新たな付加価値や製品・サービスを創出し生産性を向上させ、高齢化、人手不足などの社会課題を解決し、産業競争力を強化することが必要とされている。
 経営戦略とIT戦略の関係が強い企業の方が、ビジネスのデジタル化の実施・検討が進んでいることや、AIやIoTといったデジタルテクノロジーへの投資にも戦略が必要なことは各種調査からも明らかであるが、わが国のIT活用はこれまで手作業のコンピュータ化が中心であった。これからはデジタルビジネス戦略を提案できるCIO、IT部門、それを担う人材育成が必要である。

ITILにおけるサービスストラテジ

 ISO/IEC 20000とは、サービスマネジメント系の要求事項である。ITILは、ISO/IEC 20000の下位に位置し、ISO/IEC 20000の一つ一つのプロセスを詳細に説明しているため、ここではサービスストラテジの説明にITILを用いたい。
 ITILにおいてサービスストラテジとは「市場や顧客のニーズに合った費用対効果が高く、かつ質の高いサービスを提供するための戦略を立案するライフサイクルの段階」と定義されており、価値を生むサービスを創出するためにはサービスストラテジの確立は不可欠としている。ITILでは価値とは「有用性」と「保証」のバランスによって創出されるとうたっている。有用性とは「何を提供するか」、いわゆる機能要件的な位置づけ、保証とは「どのように提供するか」という非機能要件、サービスを提供するうえでのインフラ部分に該当する。
 サービスストラテジを立てるには、ITサービス戦略を立案したうえで、一連のサービスポートフォリオ(サービスの組み合わせ)管理を最適化し、市場調査などによる顧客ニーズの把握などを行い今後のサービス展開を戦略化、具現化していくことがプロセスの始まりであり、最終的には財務管理などとも密に連携をとることが必要である。

(図1 サービスストラテジのプロセス)

 ITサービス戦略を持つうえで重要なポイントの1つは、まず「己を知る」ための戦略的なアセスメントを行うことである。過去に廃止したものを含め、何が廃止要因となったか、あるいはそこから再利用可能なリソースや将来役立つ教訓はないか、サービスストラテジに照らして見直し、将来望むサービス提供に移行していくことをITILではサービスのライフサイクルと言っており、サービスのライフサイクルを実現するうえでも戦略立案がカギとなるとしている。

ISO/IEC 20000におけるサービスマネジメント(SMS)の定義

 自ら展開するサービスの要求事項を満たし、サービスの設計、移行、提供および改善のためにサービス提供者の活動及び資源を指揮し、管理する一連の能力及びプロセスのことをサービスマネジメントといって、それに対する要求事項を明確にしたのがISO/IEC 20000である。つまり「こういうことをしたい」という期待とともにそれを計画化し、実現するためのアクションを起こし、内部監査等でチェックし改善点があれば改善しサービス品質を高めながら維持していこうという、ITサービスの品質を高めるためにPDCAサイクルを回すための要求事項がISO/IEC 20000の考え方のベースとなっている。つまり「モノ」に対する品質MSであるISO 9000の「ITサービス」版と考えるとわかりやすいかもしれない。

(図2 ISO/IEC 20000の考え方)

まとめ

 国内におけるISO/IEC 20000の認証取得組織数はいまだ208件に留まっており、中国、インドなどと比較するとその数はかなり少ないが、ISO/IEC 20000を活用して、利益拡大、サービス品質の向上、顧客満足度向上に成功している企業もある。また、ISO/IEC 20000を用いて業務プロセスを明確にすることによって、IT投資への経営層の理解が得られるというメリットもある。デジタル社会に立ち向かっていくうえでISO/IEC 20000は非常に有意義であり、是非自社のITサービス戦略に活用して頂きたい。