2016.03.25
レポート
企業の情報セキュリティ対策の現状とインターネットトラストの確立に向けた取組み(2016年3月9日 第54回JIPDECセミナー)
サイバー法人台帳ROBINSの新たな展開
-経営労務診断サービスへの活用等
一般財団法人日本情報経済社会推進協会
安信簡情報環境推進部 主任部員 風間 正行
ROBINSをはじめた背景
インターネットの普及やビジネスの国際化の広がり、またオープンデータやビッグデータの活用に向けた動きが活発化するなかで、企業に関する信頼できる基本的な情報を集約し提供する基盤がインターネット上に求められている。JIPDECは5年程前から「サイバー法人台帳ROBINS(以下、ROBINS)」の構築を行ってきた。
インターネット上において、企業のアイデンティティ情報とは、様々な属性情報の集合で表現されるが、企業の情報を参照する側の立場(取引先や投資家、消費者など)によって定義が異なる。また、それらの属性情報には、「権威ある源泉(Authoritative Source)からの属性情報」「検証された(Verified)属性情報」「未検証の(Unverified)属性情報」といった異なるレベル感がある。本講演での「信頼できる情報」とは、情報の発信元(責任の所在)が明確な情報や第三者により検証された情報をさす。
企業に関するこうした多様な情報を束ねた参照基盤をつくるには、各情報の信頼のレベル感・入手のしやすさを考慮しつつ、共通的な属性情報のセットを考えることが必要である。また、商号や登記住所といった核になる属性情報と、それらに紐づくことで有用になる、代表連絡先や代表URL、民間企業コードといった各種情報も、あわせて参照できることが、基盤を幅広く活用するために重要である。
企業情報の参照基盤の要件として、公正中立な運営、各属性情報の由来元表示とその情報へのアクセス、情報鮮度を保つためのタイムリーな情報更新と履歴の表示、情報改竄などに対する安全性などが必須である。
このような背景のもと、JIPDECではROBINSを運営している。
ROBINSの概要と特徴
ROBINSは、社会保険労務士や行政書士等の第三者の確認者によって確認された企業の情報をインターネット上で公開するサービスである。ROBINSに掲載される企業の情報は、1)当該企業を特定するための企業のマスターデータ(商号や現住所等)と、2)企業のIDデータ(法人番号等)、3)企業の特色データ(業種や労務情報等)で構成されている。
これらの情報を単に集約して公開するのではなく、第三者による確認をすることで、企業情報の信頼性を高めている。
またROBINSは、企業情報を電子的に提供する情報基盤であること、その企業情報を既存の企業情報等と紐づけるための基本的な仕組みとなりうること、アピールしたい情報を提供できるデータベースとしてのビジネス情報基盤となること、という三つの側面をあわせもっている。
ROBINS情報の利用方法
ROBINSでの情報公開にあたっては、まず企業など掲載希望者から情報をいただいたのち、第三者確認を経てROBINS上で公開される、という流れが基本である。登録された情報はROBINS上で閲覧可能になるだけでなく、APIによってアプリケーションのデータとしても活用されている。
現在ROBINSの情報を活用しているサービスとしては、「安心マーク」「ROBINSシール」がある。
「安心マーク」とは、メールドメインの真正性をわかりやすく示すサービスである。通常、メールドメインの真正性は、メールアドレスを見ただけでは判別しにくい。これに対し、安心マークを利用することで、Webメールの受信箱において、確かにその送信元から送られてきたメールであるということを可視化することができる。「安心マーク」は、送信元のドメイン認証(DKIM)情報とROBINS上にある情報を組み合わせてWebメール上で表示させる仕組みになっている。
次に「ROBINSシール」とは、Webサイトの運営者の基本情報がROBINSの仕組みにて確認済みであることを示すサービスである。具体的には、ROBINSシールをクリックした際に、ROBINSで公開しているWEBサイトとクリックした際シールのサイトとを比較し、合致する場合に、当該WEBサイト運営者のページが表示される。
ROBINSの提供する情報
企業が所有する各種企業コード、例えば、標準企業コード、法人番号(国税庁公表)、プライバシーマーク登録番号などさまざまなコードを保有している。ROBINSは、こうした複数のコード情報を紐づけることが可能である。これにより企業の信頼性をアピールできる。
グローバルビジネスやインバウンドビジネスに必須となる英字名称をROBINSに登録ができる。この英字名称情報はEV-SSL証明書の英字名称として利用することがCA/Browser Forum(キャブフォーラム)(注1)で、認められている。
その他、全国社会保険労務士会連合会と協力し、企業の経営労務情報を社会保険労務士の診断した結果を、ROBINSで公開するサービスも行っている。「経営労務診断適合シール」を自社のWebサイトに掲載することで、外部からは見えにくい労務環境を可視化して対外的にアピールすることが可能だ。
JIPDECは、ROBINSを活用したサービスを今後も広く社会的にご利用いただけるよう取り組んでいく。みなさんもぜひインターネット上の企業情報のチェックや自社のPRに、ROBINSのサービスをご活用いただきたい。まずは、ROBINSにて検索して頂きたい。