一般財団法人日本情報経済社会推進協会

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2015.01.20

レポート

経済産業省の平成27年度IT関連施策

経済産業省 商務情報政策局 情報政策課長 宮本 昭彦 氏

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最近の経済社会の情報化の課題について~デジタル・ビジネス革命の推進のための制度整備

ビッグデータ等を「新しい経営資源」ととらえた戦略的経営を行うか否かで、企業の競争力や業績に大きな違いが生じているが、「GE グローバル・イノベーション・バロメーター2013年世界の経営層の意識調査」の結果に見られる通り、他国に比べ日本企業の取組みは遅れており、企業がビッグデータを含めデータを活用していく環境づくりが政府の課題の一つになっている。情報の利活用を促進するための制度の対応の一つとして、今月下旬から召集される通常国会でも、個人データを加工し、本人を特定できない形であれば本人同意を要さずに活用が可能になる方向で個人情報保護法改正案が審議される予定であるが、法改正が行われても施行まで約2年を要すると目されており、その間、「どこまでの情報を個人情報と定義するか」等詳細は未定であり、経済産業省も「個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン」(平成21年10月9日厚生労働省・経済産業省告示第2号)を改訂するなど、情報の利活用に向けた制度作りを引き続き行う必要がある。
また、データの利活用を進めるには、データ保有者と利用者をつなげる仕組みづくりも重要であり、組織や分野の壁を越えて、他者からデータを取得するためのデータ流通市場の構築が望まれる。そのためには、クラウド等の新しい技術に当てはめることが難しい著作権法や特許法など、旧来の法制度の見直しも制度作りにおける喫緊の課題である。
また、JEITA・IDC Japan株式会社「ITを活用した経営に対する日米企業の相違分析」調査結果などに見るように、米国企業のIT投資が「新たな技術・製品・サービス利用」、「ITによる製品/サービス開発強化」といった攻めの投資であるのに対して、日本企業は「コスト削減」といった守りの投資が多い。こうした、付加価値の創出等のためのITやビッグデータの利活用に対する経営層の意識を変革するためにも経済産業省では大企業向けに「攻めのIT投資評価指標」を、中小企業向けに「攻めのIT導入ガイド」を策定していく。また、市場に新規参入し大きく成長した企業の多くがIT 系企業であるので、社会全体のイノベーションを高
めるためにも政府としてIT系起業家を支援する「デジタル・ビジネス・イノベーションの担い手育成・技術基盤整備」を行うとともに、平成26年度補正予算案では、ベンチャーキャピタルや起業経験者等が経営支援を実施することを目的とした「先端課題に対応したベンチャー事業化支援等事業」に11.6億円を計上している。

最近の経済社会の情報化の課題について~安心・安全を確保するセキュリティ対策

他方、我が国は東京オリンピック開催を控えているが、ロンドンオリンピックでは1日に最大900万回の攻撃を受け、開催期間中に1.6億回のサイバーセキュリティ問題が発生している。我が国でもIoTなどネットワークが拡大し利便性が増す一方で脆弱性も増しており、今後一層のセキュリティ対策が必要である。経済産業省では、これらの課題対策を検討する場として、産業構造審議会・情報経済小委員会を設置し、平成27 年春には中間とりまとめを公表する予定である。

平成26年度補正予算案及び平成27年度予算案等について

今後の情報政策は、我が国の「稼ぐ力」を強化し地域経済再生につなげること、つまり「経済の好循環」の実現を目的としている。そのためにはIT利活用の推進と情報セキュリティの強化が不可欠であり、平成26年度補正予算案及び平成27年度予算案の情報分野の主な事業(情報分野)は「IT利活用の推進」、「情報セキュリティの強化」を大きな柱としている。そのため、HEMSの普及を目指す「大規模HEMS情報基盤整備事業」、中小企業等のクラウド化を推進する「中小企業等省エネルギー型クラウド利用実証支援事業」、各国のCSIRTとの連携、日本企業が被害に遭った場合の原因究明や対応にあたるIPAや国内CSIRTの取組みを引き続き行う「サイバーセキュリティ経済基盤構築事業」、ITが重要な役割を担うサービス業の生産性向上、経営革新を支援するため、「商業・サービス競争力強化連携支援事業」、「産学連携サービス経営人材育成事業費」などに予算の仕組みを作り、引き続き企業を支援していく。

図1

平成27年度税制改正について

平成27年度は、企業収益の拡大や日本企業の海外移転を押しとどめることにつながる法人実効税率引き下げの初年度にあたり、現行34.62%(標準税率ベース)から27年度には32.11%、28年度には31.33%へと引き下げ、諸外国の水準に照らし、数年以内に20%台まで引き下げることを目標としている。また、企業のオープンイノベーションの促進を目的として、研究開発税制の強化(従来の30%から25%に引き下げられた総額型の控除割合にオープンイノベーション型5%を組み合わせることで控除上限30%を確保)、地方における企業の拠点強化を促進する特例措置の創設など、税制改革面でも企業の競争力の持続・強化を支援している。さらに、従前から国内企業に不利と指摘されてきた、海外からのインターネット等を通じた電子書籍・音楽・広告の配信やクラウドサービス等の役務の提供に消費税が課せられていないという現状についても、国境を超えた役務の提供に対する消費税制度の見直しが行われた。

まとめ

政府は、企業がデータを適切に利活用し、データ保有者と利用者が適切に結びつき、安全な情報の利活用が推進されるよう、今後も関係各位との対話を進めながら、制度作り並びに予算執行措置等を進めていく。

  • 2015年1月20日 第44回電子情報利活用セミナー「経済産業省の平成27年度IT関連施策」