レポート

パネルディスカッション
「法人番号の社会的意義とその有効活用」要旨
[モデレータ]JIPDEC 常務理事 小林 正彦
[パネリスト]東京工科大学 手塚 悟 氏 / 株式会社日立製作所 中村 信次 氏

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法人番号表記を徹底してほしい場面

小林)  まずは、経済産業省のまとめた「民間事業者における法人番号の利活用における課題」の一つとしても挙げられていた「法人番号の普及が必要」という課題と、「法人番号普及のためにも個人事業主への付番が必要ではないか」という課題について扱いたい。
 裁判所も含めた行政が公表する全ての情報や報道で企業名を出す時、何らかの「企業名称一覧表」が作られる時、民間企業間の契約書類や取引書類上などに入れてもらうことが考えられる。また、2016年1月から利用開始となっているので、2016年元旦の年賀広告などに記載されるとインパクトがあるのではないか。

手塚氏)  社員証や名刺にアプリケーションとの連動を意識して入れることも考えられるのではないか。法人番号は自由に利活用可能としているので、皆様に積極的に使っていただきたい。

中村氏)  個人的なコメントになるが、テレビ番組などで企業の先進的な取り組み事例などを紹介する際に、法人番号も併せて公表すると、企業名のみよりも検索・特定をしやすくなり便利ではないか。また、東京マラソンなどのイベントの協賛企業のリストや電車の吊り広告等に企業名とともに掲載すると、企業の効果的なアピールとなるのではないか。

参加者から)
・特に飲食店や旅行分野の企業などについて、Webページに掲載するようにしてほしい。
・個人番号とともに法人番号も一人ひとりに差し上げて、将来起業した際に使えるようにする、といったことも考えられるのではないか。

個人事業主の付番問題

小林)  インターネット上では、個人事業主も法人と同じように活動し、税金を納めている。法人番号導入の際に、個人事業主を法人と同じように扱うためには、13桁の法人番号空間のなかに個人事業主の番号を正式に位置付けることが必要ではないか。法人番号13桁のうち、最初の1桁(検査用数値)を除いた、残り12桁(法務省が発番する「会社法人等番号」)のうち、登記の無い法人、地方公共団体、外国法人等、国の機関、人格のない社団等に将来付番するためとして使われていない大きな空間がある。この部分の番号を、政府の方針が決まり国税庁が正式に使うまでには時間がかかりそうなので、それまでの間、一部の空間を個人事業主への付番用に使わせてもらえないだろうか。

図1

手塚氏、中村氏)  そのように利用することを国税局が許可してくれれば考えられるかもしれないが、その番号を正式な付番に使うことになった際に、消し忘れや重複を残さず綺麗にゼロリセットできるか、といった課題があるだろう。

小林)  多数の番号が数年間ルール化されず使われないデメリットは大きいと思うので、秩序よく運営するなら民間で利用してよいということになってほしいと考える。
 付番の考え方としては、JIPDECが提供するサービス「サイバー法人台帳ROBINS」(以下、ROBINS)が行っている付番方法も参考にしていただけるかと思う。ROBINSはインターネット上で活動する主体のアイデンティティを提供する基盤として、法人とともに個人事業主も正式な記載対象とし、法人登記に記載の名称と住所からルールに基づく計算でROBINSアドレスというものを創出している。先ほど「生まれた子供に先に法人番号を与えてしまってもよいのでは」というご意見があったが、ROBINSのアドレス方式の場合は、住所と名前から、番号を確定し付与することができてしまう。発番というと、どのような順番で番号を付けるか、誰が発番機関となるのかなどの点が難しいと考えられがちだが、このように付番ルールを決めておくと、発番機関がなくても自動的な付番が可能となる。

法人ポータル構想とワンストップサービス

小林) 法人ポータル構想とワンストップサービスについて、国が提供するとされ、検討が進められているが、イメージが共有されていない部分もあると思う。企業が提出した書類を省庁
間で横渡し・共有する仕組みがあり、複数の省庁に同じ書類を提出するような手間を省ける、といった状況がワンストップサービスのイメージだろう。これを実現するために、理想としては省庁間の内側に情報の共有・連携の仕組みを作ることができれば良いが、全省庁を跨がる膨大なシステムとなり大変である。そこで、行政の内側ではなく外側に情報連携の仕組み作ると実現できるのではないか、ということが、法人ポータル構想で考えられていると思う。
 民間企業が省庁に必要書類を提出する際には、「国が運営するポータルとは別に民間のポータルを一つ作り、そこに民間の各企業が情報を置き、各省庁が取りに行く」という仕組みが考
えられるのではないか。

手塚氏)  指摘の通りで、省庁間の情報連携を、従来はバックヤード連携の形で模索し実現に至らなかったが、構築予定の法人ポータルを通してフロント側で行おうということが、現在議論されていると思う。民間の側も、名称やデータ保有の方法、設計を今後検討していく必要があるが、「民間の企業ポータル」のようなものを作り、民間のポータルと国のポータルが連携して一対の法人ポータルのように動く形としたいと考えている。

中村氏) マイガバメントという新しい構想が出てきた中で、「電子私書箱」という言葉が出てきているが、発信/受信をするところ、申請を行うところ、書類の維持管理・保管を行うところなどを概念として分解した上で構成要素を議論しないといけないと思う。公共サービスに係る古典的な悩ましい問題として、公共サービスとしてはどこまでのものを提供するかという問題が昔からあったが、その意味では、官のサービスと民のサービスの領域がうまく連携して、事業者にとって効率的な在り方をうまく定義できるとよいと考える。

手塚氏) インターネット社会でのビジネスでは、企業名の振り仮名や英語表記といった情報が重要であるが、国に企業ポータルから提供してもらうためには法整備が必要となり時間がかかる。インターネット社会では待ったなしでビジネスが動いているため、英語表記などについては安全性の保証や第三者点検などを備えた信頼性の高い民間ポータルで提供し、そのような民間ポータルと、官の持つ情報を提供する国が運営する企業ポータルを共に充実させ、うまく運営していく世界を作っていくことが求められるのではないか。

小林) 現在の「法人ポータル」の構想では、国が提供するものは「3情報」とされているが、英字名称や読み仮名などの情報も、5年間くらいかけると、国が法人ポータルで提供できるようになるだろうか。

手塚氏) 国が提供する基本情報の他にプラスアルファで必要となる情報については、ビジネス環境の変化に応じて出てくるものなので、応用領域のデータとして、民間側で提供することとし、それらの民間側で提供する情報と国の法人ポータルで提供する情報との紐づけを確実にする、ということがポイントとなると思う。

法人ポータルの様々な用途

小林) 民間企業が積極的に世の中に発信・公開したい情報を掲載する機能を、法人ポータルに持たせてもよいと思う。企業のPRを入れてもよいのではないか。

手塚氏) 法人ポータルの認証については、公的法人認証に相当するものをどのように考えるかについて悩んでいるが、権限情報を法人ポータルに置き、権限体系を公開して認証を行うということも一つのアイデアだと思う。

法人ポータルに関して(質疑応答)

 参加者からの質問) 例えば上場企業は、証券コード4 桁を持ち、会社のニュースリリースにも記載されていているが、13桁の法人番号は、CM等で出てきても覚えられず、インターネットでの活用が中心となるのではないか。マイクロペイメントの場面や、証券コードを持たない個人事業主、中小企業、非上場企業などを同名の別企業と見分けて一意に特定したい時などに、法人番号活用の論点があるのではないか。

手塚氏) パネルディスカッションの冒頭では普及の観点からヒューマンリーダブルの世界での露出についても議論したが、法人番号のより本質的な役割は、情報の取り込みの自動化や効率化、企業の名寄せといった課題解決。そのためにも、マシンリーダブルの世界におけるコード体系としての利活用が重要な論点となるだろう。

参加者からの質問) 国のポータルのシステムを法律でがっちりと設計するようなことはできないので、国のポータルは民間企業が開発・運営することになり、現在のNACCS(輸出入・
港湾関連情報処理システム)の仕組みのように、最低限必須の事項を決めて、その開発・運営を担う民間企業がリクワイアメントを聞き更新していくという考え方になるのではないか。

中村氏) これまでの検討でそのような発想はなかったが、法律にがっちりと書かないと何もできないということはなく、例えばオープンデータなどは法律的には何の裏付けもなく進められている。提案し続けることを含めて難しい部分はあるが、その時の政治と行政に実現・推進に向けた強いパワーがあれば可能ではないかと考える。

小林) 法人ポータルの構想については、現時点では検討中の事項もあり、あまり情報が出てきていないが、そのうちに国から具体的な構想案のようなものが出てくるだろう。

アイデンティティとコード連携

小林) 政府がオープンデータの取組として法人番号と紐づけて情報公開を進めようとする際に、国や自治体の既存の企業コード等と法人番号との名寄せを行うのであれば、その対応関係表なども、オープンデータとして公開していただけるとありがたい。
 アイデンティティとは、主体の属性情報の集合と定義されるが、法人の場合、本社の所在地、社名、URL、メールアドレスといったものが属性情報に相当する。国が公開することになっている基本3情報以外の法人の属性情報を世の中に提供することが必要であるが、この点は、先ほど議論したように、民間がカバーする領域になるかと思う。そのような情報を集め名寄せを行おうとする際に、信頼できるキーとなるような番号が、これまではなかったが、このたび「法人番号」としてようやく世の中に出てくる、ということのインパクトは大きい。特に法人番号については個人番号と異なりプライバシー面での課題もないため、法人番号によって世の中にある様々な情報の紐付けをどんどん進めていけるだろう。
 コード連携のニーズは、国、自治体、民間の様々なところにあると思われ、名寄せを効率的に行う仕掛けがないと相当なロスが発生すると思う。ROBINSをそのような効率的な名寄せを簡単に行えるようにし、世の中で広く使っていただきたいとJIPDEC では考えている。
 日立製作所では社内システムで独自の企業コードとデータベースを運営しているとのことだが、様々なコードの名寄せが大変なので自分たちで名寄せデータベースを作ってしまおうという考え方が動機としてあったのではないか。

中村氏) 名寄せをスムーズに行えなかったことで、例えば営業の現場で、ある企業について、社内の他の事業部と既に取引関係等があるかどうかが分からないなどの課題があったようだ。

小林) 名寄せを行えないことによる社会的コストは大きいと聞くので、この点の解決についても法人番号が活躍できるとよいと思う。

  • 2014年10月3日 第42回電子情報利活用セミナー「法人番号(企業版マイナンバー)の社会的意義とその利活用」