レポート

企業から見た法人番号
株式会社日立製作所
情報・通信システム社 システムソリューション事業本部
公共システム事業部 公共イノベーション事業推進本部
公共ビジネス推進部 担当部長 中村 信次 氏

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法人番号の制度

 法人番号は、平成28年1月以降、税分野の手続きから事業主が行政機関に提出する書類に記載することが想定されている。また、「基本3情報(法人番号、名称、所在地)」がインターネット上で公開され、国税庁が構築する法人番号システムを通して、自社情報の更新や他社情報の検索・ダウンロードが可能となる予定である。
 プライバシーの課題のあるマイナンバー(個人番号)と異なり、法人番号は利用範囲の制約がなく、政府もこの点を積極的にアピールし利活用を促している。電子政府の議論のなかで法人を一意に識別できるIDの付番の必要性を主張してきた事業者側の立場から言うと、そのような環境が整備されることは貴重だと考える。基本3情報では足りないといった意見もあるが、法人番号を、使える場面で積極的に使い、不足している部分は指摘・提案していき、前向きにサポートしながら発展させていくことが大切だと考える。

法人番号の想定活用例

 法人番号利活用推進のための政府の推進策としては、短期的には、行政機関が公開する情報(オープンデータ)や、企業から行政機関への申請手続き、行政機関の情報システムでの利用など、中長期的には、行政機関における企業情報の共有基盤やその認証基盤の整備、個人事業主への付番、請求書や領収書等への付記などが、検討されている。
 平成25年度実施の民間事業者へのヒアリングを基に株式会社日立コンサルティングが検討した利活用ユースケースとしては、短期的には、取引先等の企業情報の収集・確認、企業マスタの登録・更新、グループ内調達情報連携などの効率化、サーバー証明書の信頼性向上、コードによる属性情報の自動入力、なりすましメール・フィッシングサイト対策などが挙げられた。施策追加や制度改正を要する中長期的な観点からは、取引先の登録・更新の一層の効率化、行政手続きや企業間取引の添付書類の削減、入金消し込みなどの業務の効率化、マネーロンダリング対策、従業員情報の官民連携による効率化などがある。
 具体的なイメージとしては、
・取引先を法人番号で一元管理することで、取引状況の全体像の把握が容易になる
・法人番号とともに基本情報が公開されることにより、信用調査会社が新設企業の把握のため
 に行っている全国の法務局に情報公開請求の作業負荷や、企業のDM再送付コストの軽減、図1のように取引先企業などの廃業や更新情報の随時把握につながるなどの活用方法と効果が期待されている。

図1

 法人番号の利活用による経済的な効果としては、すぐに利活用が期待される領域では日本全体で70億円ほど、個人事業主まで付番が進むと約1.5倍の108億円ほどの効果があるとされ、施策追加により経済効果は増大するとされている。
 海外のユースケースとしては、例えば欧州では、企業コードが口座開設から、受発注(商取引)、支払・売掛管理、決算時、財務諸表などの提出時まで、企業活動の基本的な業務全般で活用されている。政府機関、信用調査会社と多くの民間企業が同じ企業コードを利用しているため、各企業は、取引先企業などの更新情報の自社システムへの定期的な取り込みや最新の企業情報の利活用が可能である。また、インボイスや発注書への企業コード記載が義務付けられ、税務機関との情報連携の仕組みができているため、取引の透明性の確認、納税の事務コストの軽減、納税の公平性向上にも寄与している。

企業コードの利活用事例 日立グループにおける取引先コード統一

 日立製作所は、様々な分野のビジネスを行う複合的な企業であり、事業体ごとに取引先情報などを管理してきたが、2005年から広範な事業領域をグローバルな規模でIT により統合していこうという取組を「One Hitachi」として進めてきた。このなかで、各事業部が持つ情報を横串で共有・管理・連携していくため、共通言語としてコードの統一化に取り組み、10桁の独自コード体系「G&G(グループ&グローバル)企業コード」を制定した。G&Gコードは事業所に対しても本社番号とリンク付ける形で付番し、各企業/事業所の名称、住所、代表名等の基本情報、DUNS NumberやTDBコード等の企業コード情報、口座番号、信用状況等の属性情報を、一つのデータベースシステムで管理している。
 コード統一の成果としては、個々のグループ会社および日立グループ全体として、情報連携や企業マスタ運用・鮮度維持の省力化、効率化、情報システムの効率化・有効活用といったメリットがあり、財務・調達・営業・人財活用など様々な面で経営効率化にもつながった。
 統一コードの制定・普及において、従来の日立製作所視点・日本視点からグループ&グローバル視点への転換、各社・グループ全体メリットへの理解、共感を広げることや、移行時のサポート、付番の効率化・データ精度向上などの点で苦労したが、各社の賛同と協力を得るための取組、合同説明会開催など主管部門との連携などを工夫し、体制についても費用の継続的確保、効果の明確化などを工夫したことで、成功させることができた。
 日立製作所では、このように本社とグループ会社間で連携してコード統一の取組を進めたが、法人番号については、政府と民間企業の間で事業活動における効果やメリットを共有して、利活用を促進できるとよいだろう。

オープンデータの動向

 政府は、「オープンデータ憲章アクションプラン」において2015年末までに特定のデータの「オープンに利用できるフォーマットで公開」を目指すとし、オープンデータ推進のロードマップの公表、「IT国家創造宣言」への目標の明記、データカタログサイト「DATA.GO.JP」の稼働(本年10月1日から開始)など、積極的にオープンデータを推進している。
 公開される情報をより使いやすいものとし、利活用を促進するためにも、法人情報関連のオープンデータに法人番号を付記することが議論されており、是非進めてほしいと考える。また、政府や自治体の発信する処分、調達・落札などの情報にも法人番号が付記されるようになると、信頼性やエビデンスの観点からより利便性が高まるだろう。

図2

法人番号の民間活用拡大に向けた展望

 法人ポータルについては、マイナンバー等分科会において具体化に向けた議論が進んでおり、将来的にはオープンデータとの融合により、企業にとって有効な法人関連情報の入手・活用がより容易になっていくと考えられる。
 今後の課題として、企業内の組織・業務を横断した活用や民間サービスでの活用を推進するためのデータフォーマット・項目のルール化や、実ビジネスや社会保障関連・自治体関連などの手続き効率化のための事業所情報の活用などが必要となってくるだろう。この他にも様々な課題があるが、それらの解決に取り組みつつ、法人番号の利用を促進していけるとよいと考える。

  • 2014年10月3日 第42回電子情報利活用セミナー「法人番号(企業版マイナンバー)の社会的意義とその利活用」