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2015.11.11

レポート

オープンデータ活用事例から見出す新たなビジネスの可能性(2015年11月11日 第51回JIPDECセミナー)

オープンデータ活用事例から見出す新たなビジネスの可能性
一般社団法人リンクデータ 代表理事 下山 紗代子 氏

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オープンデータとは?

 データをオープンにするとは、誰かが所有しているデータを誰でも自由に使えるものにすること。つまり、みんなで使うために公開するデータであり公共財である。
 オープンデータの条件としては、誰でも自由に使える(商用利用を妨げない)、自由に加工できる、自由に再配布できるものとして、国際的に定義されている。
 著作権の扱いをわかりやすく提示するものとしてクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)がある。CCライセンスの中で、オープンデータとして認められるものはCC-BYとCC-BY-SA、CC0であり、現在オープンデータと呼ばれているものはほとんどがCC-BYである。
 オープンデータの流れは、2013年にオープンデータ憲章により「税金を使って作られたデータはすべて公共財として公開するべきである」という考え方が採用されて急速に進んでいる。日本政府は世界最先端IT国家創造宣言で「2015年度末までに他の先進国と同水準のオープンデータを実現すること」を目標として掲げており、2014年10月には日本の公式データカタログサイトとしてDATA.GO.jpが本格運用を開始した。現在、14,000件以上のデータが公開されており、特に国土交通省の地理空間情報が多く公開されている。
 一方、世界の中で見ると、オープンデータインデックスによる日本の順位は2014年時点で19位となっている。ただし他国のオープンデータ化も進んでいるので、2015年は30位程度に留まるという予想である。
 また、日本国内でオープンデータを推進している自治体は164と全体の8%に留まっているが、これからの自治体にこそオープンデータが必要になるというのは、すでに先進的に行っている自治体の一致した意見である。財政難、人員削減の一方で市民ニーズが多様化するなか、自治体職員だけで検討・対応するには限界があるが、現在広がりを見せているシビック・テクノロジーという活動では、「ともに考え、ともに作る」という考えのもと、「Code for Japan」などの団体が地域の課題解決に向けて活動している。オープンデータは、それ自身が何かを生み出すのではなく、様々なステークホルダーの協働体制を作るきっかけとなり得るものである。

オープンデータの事例

 LinkData.orgでは、行政と民間の協業を促進するためのプラットフォームを提供している。

LinkData
 自分のデータ流通チャンネルを開設することができ、手元にあるデータを簡単に標準化・API化することができるもので、オープンデータ化になかなか予算がかけられない小規模な自治体のスモールスタートとして、現在43自治体に利用されている。
 アップロードしたデータに緯度経度が含まれていると、自動的に地図を生成する機能がある。これによって公開された地域の情報をさらに束ねることで、たとえばAED設置施設情報プラットフォームのような新たなサービスも生まれている。
 また、市民側が公開しているデータも多くある。大阪市では、民間団体が大阪市にデータ提供を求め、その結果オープン化されたデータは2万件に上る。現在では、市と民間団体の協働がさらに活発化し、シビックハッカソンなども開催されている。
 また、京都では、図書館司書グループがデータ化した「京都が出てくる本」を観光団体がLinkDataを使って観光案内アプリに取り込むなど、従来では関係性の低い市民団体同士がつながってデータ流通を促進しているケースもある。

App.LinkData
 オープンデータが増えても、開発者がいないためアプリ化が進まないという問題も出てきている。このため、逆マッシュアップという技法で、既存のプログラムを再利用しデータをAPI化し、アプリとして提供できる環境を提供している。秋田県横手市では、実装例である「スポット×混雑度マッシュアップMAP」を活用して職員自らが公開したデータからアプリを作成し、成果の見える化を実現している。

Knowledge Connector
 現在、全国各地でハッカソンやアイディアソンなどオープンデータ活用イベントが開催されているが、それらの成果が残らないという問題に対し、平成26年度電子経済産業省事業の一環として、Knowledge Connectorを構築し、成果の一元的検索や人材マッチングを通じたビジネス化支援につなげている。

オープンデータを使ったビジネス事例

 オープンデータの経済効果は、日本では年間1800~3500億円と見込まれており、ビジネス化が期待されている。オープンデータのビジネス活用事例集として、米国ではOpen Data500が公開されているが、日本でもOpenData100としてスタートしており現在31事例が紹介されている。
 オープンデータビジネスは以下のようなタイプに分類することができる((一社) オープン・コーポレイツ・ジャパン 東 富彦氏による定義)。

1)付加価値型
 既存ビジネスの価値向上にオープンデータを利用するもの。
● 英国 carehome.co.uk(介護施設の評価情報を提供することで情報の公平性を担保)
● 日本 Zaim-わたしの給付金(居住地域や家族構成、家計簿記録から「もらえる可能性がある給付金、手当・控除」情報を提供)

2)新価値創造型
 多様なデータの掛け合わせにより未来予想を行うもの。新たに開発されるアルゴリズムや分析モデルを価値の源泉とする。
● 米国の個人が運営 insectforecast(害虫発生状況を監視し、害虫駆除のための薬剤散布タイミングを提供。バイオ化学メーカーモンサントがスポンサー。)
● 不動産価値測定GEEO (路線価、国勢調査等をもとに不動産賃料の推定、不動産価値を算出。基本機能は無料、プロフェッショナルサービスは有料)

3)プラットフォーム型
 特定領域のデータを大量に集め、プラットフォーム化する。収集データを利用しやすく提供することが第一の価値創造。その後データ利用状況等の分析により更なる価値を生み出す。
● マイ広報紙 (広報紙データを収集し、各地の広報紙を自由にネット上で閲覧可能とするサービス)
● WELMO社のミルモ (散在する介護情報を集約し、福祉サービスの選択を支援)

 このほかに、オープンデータという手法自体をビジネスに活用するモデルとして「リリース&キャッチ型」が考えられる。カナダのGoldcorp社は自社の地質データを公開し金鉱脈がどこにあるか分析を公募する「ゴールドコープチャレンジ」を開催し、幅広い専門家から分析結果を得ることにより倒産危機を回避し、大手企業に成長した。日本では、「ブラックジャックによろしく」が著作書籍をオープン化することにより、結果的にその他の著作物の売り上げも増大するというケースも見られた。このように、広告的にオープンデータ化を行うというビジネスモデルもすでにみられる。

参加型オープンデータの取り組み

 LinkData.orgが提供するもう1つのプラットフォームに「CityData」がある。これは、地域におけるオープンデータ活動を指標化する機能で、活発に行われている市区町村のランキングと活動貢献者を行政、民間の区別なく一覧で表示している。

 これからの動きとしては、オープンデータからLOD(Linkded Open Data)への流れがある。データの機械可読性を高めWeb全体をデータベースとして取り扱うというLODの世界実現に向けて、2011年度よりLODチャレンジを実施している。企業の関心も高く、今年度も10月1日から2016年1月17日まで作品を募集している。関心のある方はぜひ応募していただきたい。